Technical Information

FT-IRによるポリエチレンの熱劣化分析

Introduction

FT-IR法とは、化合物分子の赤外吸収スペクトルを利用して化合物を定性・定量する方法です。
プラスチックは様々な分野で幅広く使用されています。一方で、比較的熱によって酸化されやすく、それに伴って機械的・物理的性質など劣化が生じてきます。
FT-IRでは熱劣化により変化する官能基を検出することができるので、劣化現象を把握するために有効な分析法の一つです。
今回は、代表的な汎用プラスチックであるポリエチレンを用いて熱劣化分析を行ったのでご紹介します。

Method

ポリエチレンプレートを150℃、180℃、200℃、230℃、250℃でそれぞれ加熱処理を1時間施しました。

今回はそのままの形状で測定することができるユニバーサルATR法を用いて、ポリエチレンプレートを測定しました。

Result

ポリエチレンの構造はCとHの直鎖で構成される最も単純な形です。そのため、加熱前のスペクトルのように、2,960cm-1および2,870cm-1付近、1,460cm-1付近、720~730cm-1付近のみに吸収ピークが検出されます。
加熱で劣化させていくと、1,700cm-1、1,200cm-1付近にC=O、C-Oといった酸化を示唆する官能基や結合に由来する吸収ピークが現れることが確認できました。
加熱温度が高くなるにつれて、特に180℃からは1,700cm-1付近のカルボニル基のピーク強度が増加しているように見受けられました。そこで、加熱温度におけるカルボニル基のピーク強度の関係性をグラフに示しました。
※ただし、FT-IRでは測定ごとに吸光度の絶対値が変化するため、加熱による変化の少ない2,960cm-1付近(メチレン基)のピークを基準とした1,700cm-1付近(カルボニル基)の比を使用しました。

加熱温度とカルボニル基の強度には正の相関関係が認められました。
完全に焦げて炭化してしまっている場合を除き、この関係性を利用してポリエチレンの熱劣化状態を定量的に把握できる可能性があります。
また、他の材質でも同様の傾向が確認できれば応用することが期待できます。