News

リチウムイオン電池正極材のCs-STEM測定

2024.05.13

技術ブログ

リチウムイオン電池の正極材をCs-STEMで評価した事例をご紹介します。

対象は正極材として広く用いられているLi(Ni,Co,Al)O2活物質であり、当社で充放電サイクル試験を行った劣化品です。
充放電サイクルを行うことにより活物質表層近傍で構造や化学状態が変化することが知られており、これを調査しました。また、活物質表層に形成したLi化合物被膜や活物質内の遷移金属分布ムラも調査しました。

事例1 正極活物質表層の変質相厚み調査(原子分解能STEM観察)

活物質表面近傍を拡大観察した結果を示します。
Cs-STEMでは走査電子線をサブnmまで絞ることができ、高い空間分解能での観察が可能です。
下の結果から、活物質表層には約1nmの厚みで構造変化している領域が認められ、Li挿入脱離時の抵抗が高まっている様子がうかがえます。

事例①HP.png

事例2 正極活物質表面の遷移金属価数変化調査(EELSライン分析)

活物質表層から内部にかけてNiの化学状態変化を調査した結果を示します。
STEM-EELSではnmオーダーという高い空間分解能でライン分析を行うことが可能です。
1nmピッチでNi-L吸収端近傍スペクトルを取得した結果を下に示していますが、活物質内部と比べて表層近傍ではピークトップが低価数側(低エネルギー側)に変化しており、どの程度の深さまでピークトップの変化があるかで劣化度合いを調査することが可能です。
その他、MnやCoなどの遷移金属も評価可能です。

事例②.png

事例3 正極活物質表面のLi化合物分布調査(EELSマッピング分析)

充放電サイクルを行った劣化品では活物質表層にnmオーダーの薄いLi化合物被膜が形成されます。
STEM-EELSマッピングを行うことで被膜の厚みや成分を調査することが可能です。下のマッピング結果から、活物質表層にLiとFの分布が認められ、該当領域から抽出したLi-K吸収端近傍スペクトルを見るとLiFの
スペクトル形状に似ていることがわかりました。

事例③.png

事例4 正極活物質内部の組成分布ムラ調査(EDXマッピング分析)

STEM-EDXマッピングを行うことで活物質内の組成分布ムラを調査することが可能です。
マッピングを実施することで特異な偏析や欠乏などの有無を評価することができ、マッピングデータから任意領域のスペクトルを抽出することで簡易定量計算や比較を行うこともできます。
※EDXではLiなどの軽元素は検出が困難です。

事例④.png

その他、冷却ホルダーも保有しておりますので熱に弱い材料もご対応可能です。
お問い合わせお待ちしております。

解析仕様

FIB、FIB-SEM(日立ハイテク製:集束イオンビーム加工観察装置 NX5000)

NX5000_shomen のコピー.jpg

Cs-STEM(日立ハイテク製:走査型透過電子顕微鏡 HD-2700) 

HD-2700.jpg


キーワード
FIB,STEM,TEM,EDX,EELS,マッピング,リチウムイオン,電池,断面,非曝露,結晶構造,分析

ニュース一覧へ

評価業務にお困り事はございませんか?

JTLはお客様の頼れるパートナーとして、
シチュエーションに応じた迅速丁寧な対応を心がけております。
どんな些細なことでも構いませんので、
まずは下記のメールフォームよりお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら